気管支喘息

気管支喘息とは

気管支喘息は、発作性に咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴う呼吸困難を繰り返す病気であり、この呼吸困難は自然にあるいは治療により軽快、治癒しますが、ごく稀には死に至ることもあります。病態生理としては気道の粘膜、筋層にわたる可逆性の狭窄病変と持続性炎症およびリモデリングといわれる組織変化が中心であると考えられています。

原因・増悪因子

子どもの気管支喘息のアレルギー性の原因としては、ダニの死骸やフン、それらを含んだほこり、ペットのフケなどの吸入抗原が大部分をしめます。典型的な発作では、慢性的なアレルギー性の炎症反応のために気道が過敏になっているところへ、原因抗原を大量に吸い込むことにより症状が誘発されます。住居内抗原として最も重要なダニ(コナヒョウヒダニ・ヤケヒョウヒダニ)では死骸やフンに含まれる蛋白質が抗原となり、アレルギー症状を起こします。ダニはハウスダスト1g中に数十匹から数千匹いますが、肉眼では見えません。人のフケ、食べ物のかすなどを餌として高温・多湿の条件下で盛んに繁殖し(室温25℃前後、湿度75%前後のとき最も多く繁殖)、じゅうたん・畳・寝具などもぐり込める場所を好みます。ペットの毛・フケ・唾液、カビ、ゴキブリ、花粉などもアレルギーの原因になります。室内に観葉植物を置くと湿気が多くなったりカビが生えたりしやすくなるので置かないほうがよいでしょう。

乳幼児ではもともと気管支が細い上に気管支平滑筋も未発達で気道がわずかな刺激で収縮しやすく、しかも粘液の分泌も起こりやすいという解剖生理学的悪条件が3拍子そろっていますので、原因や免疫学的機序の関与の有無に関わらず喘鳴をきたしやすく、適切な治療を行わないと重症化しやすいという特徴を持っています。呼吸器感染症、精神的なストレス、気象の変化、激しい運動、たばこや花火の煙、揮発性有機溶媒、食品添加物なども発作の原因・増悪因子となります。小麦粉やそば粉は食物アレルギーの原因物質となるのみでなく、気道から直接入って吸入抗原として喘息発作をおこすこともあります。

診断・検査

気管支喘息の診断は、典型的な喘息発作の症状(笛性喘鳴を伴う呼吸困難)がみられることが多い学童期以降は容易ですが、乳幼児の場合は、喘息ではなくても喘息の特徴である「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴がおこりやすく、喘鳴=喘息とは診断できません。これは、乳幼児の気道は年長児とくらべて狭い、弾力性がない、たんなどの粘液を出す分泌腺が多いことなど、気道が狭くなりやすい条件がそろっているため、いろいろな原因、特に呼吸器感染症により喘鳴がおこりやすいためと考えられています。いわゆる喘息性気管支炎による喘鳴もその一つです。

小児の気管支喘息は6歳までに80~90%が発症し、発症年齢のピークは1~2歳にあります。早期の診断と治療開始により予後がよくなると考えられていますが、実際には2歳未満の小児の気管支喘息(乳児喘息)の診断はむずかしいため、気道感染の有無に関わらず明らかな呼気性喘鳴のエピソードを1週間以上の間隔をあけて3回以上経験した場合に乳児喘息と診断することにしています。適切かつ効果的な治療を行うためには原因・症状悪化因子を見つけることが大切です。アレルギー性の原因を見つけるためには血液検査が役立ちます。日本の気管支喘息児では、ダニに対する特異的IgE抗体がもっとも高率に陽性となっています。

症状

乳児や幼児では苦しくても訴えることができずに機嫌が悪く見えるだけのこともあります。「ヒューヒュー」、「ゼーゼー」と音がするときだけでなく、たんが絡んだ咳をよくする、急に咳き込んだり機嫌が悪くなる、呼吸の回数が増えてきて苦しそう、しゃべらなくなった、ご飯を食べようとしない時なども喘息発作のことがあります。発作の程度は大きくは小発作、中発作、大発作、呼吸不全の4段階に分けることができます。小発作~大発作までの症状を表にお示しします。登園できるのは通常は小発作までですが、症状が急に悪化することもありますので、事前に保護者と発作時の対応について打ち合わせておく必要があります。

治療

発作時の治療

まず発作の程度を把握することが必要です。小発作では食事や通園をはじめ、日常生活は普通にできます。お昼寝も苦しくて目覚めるというようなことはありませんが、背中や胸に耳をあてると喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が聞こえます。保護者と連絡をとり、あらかじめ主治医の指示により本人が持参あるいは園で預かっている薬がある場合には内服、貼付または吸入させ、様子をみます。一般的には、横にさせるよりも座らせたほうが呼吸は楽になります。ゆっくりと腹式呼吸をして、痰(たん)が出るようであれば、水を飲んで痰を吐き出しやすくします。薬がない場合や薬による治療に反応せずに症状が続くか進行していく場合には再度保護者に連絡をとり、保護者の到着を待つか、直接医療機関を受診します。小発作でも低年齢児では症状の進行が早いので注意する必要があります。初めから中発作以上の強さの発作の時には、保護者に連絡をして発作時の治療を行った上で医療機関を受診します。

治療の有無に関わらず次のような症状がでたらすぐに医療機関を受診しましょう

  • それまでヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴が聞こえにくくなってきたのに、回復するどころかむしろ苦しくなったりチアノーゼが出てきた時には救急車をよびましょう。
  • 呼吸が苦しそうなサインがみられる時。
     尾翼呼吸:呼吸する時に小鼻が開くようになる。
     肩 呼 吸:肩を上下に動かして呼吸する。
     陥没呼吸:息を吸うときにのどの下の辺りや肋骨の間が凹む。
     起坐呼吸:横になると苦しいので座ったままでしか呼吸ができない。
  • あぶら汗をかく、唇の色や顔色、爪の色が紫色になる(チアノーゼ)
     話しかけても返事がしづらそうで、息苦しくて眠れない。

発作の予防のための治療

まず発作をおこさないように予防することが大切です。室内環境整備と長期管理薬の使用が中心となります。

①室内環境整備

気管支喘息の原因のアレルゲンの排除がとても大切です。掃除カテゴリー別にアレルギー対策のための掃除の仕方を研究しましたので、こちらを参考にしてください。

②長期管理薬の使用

ひどい発作が起こったり、発作がたびたび起こる状態が続いたりすると、気道の炎症がますますひどくなり少しの刺激で発作がおこるようになります。発作が起こっていない時にも気道の炎症をおさえて安定した状態を保つ治療がとても大切です。

長期管理薬とは、喘息発作が起きないように(重症な場合は軽い発作で済むように)気道の炎症を抑えることを目的に長期間にわたって使用するするお薬であり、発作をすぐに止める作用はありません。ほとんどの長期管理薬は1日に1回ないし2回の内服または吸入です。

共同施設や保育園などでの配慮

ほこりの出る場所の掃除・ペットの飼育係などが子どもによっては喘息発作の原因になることがあります。事情を理解してもらえるよう他児への説明や配慮が必要です。エアコンは夏、冬の始動前に内部をクリーニングし、フィルターはこまめに掃除機で吸引してホコリをとりましょう。予算の関係上1年に1回しかクリーニングできない場合には、夏の始動前がよいでしょう。

 

京都府医師会ホームページ引用

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